ふたたび 卯月のこと


1日(水) 日めくりカレンダーというのが好き。月始めの「1日」という数字を見るとその無駄のないすっきりとした1本の線に、なんだか改まったやる気がいっぱい詰まっているような感じがするので。
でもだからといって、新しく始まった月を心新たに充実していこうという決意などはもたず、まいどばかばかしくもお馴染みのだらだらした毎日となるのだけれど。
今日は81回目のユトリーバで9人のお客様。
普段歌わないハルコさん、アツコさんも早くに姿を現したので、誰でも歌える愛唱歌集の日とする。
今日も話の花が満開で、止まるところを知らず、夕方まで盛り上がる。
時間いっぱいまでのりのりなので、あわただしくお帰りになったあとの戦利品がいっぱいある。
ハルコさんが行きがけに買ってきて冷蔵庫に突っ込んであった豚肉2パック、お味噌汁を大鍋いっぱい作ってくださったアツコさんの忘れて行った袋には、えのき茸の大束とひね生姜。どちらも有難くいただいてしまう。
1ケ月は預かれないものね。
勢いにのって、帰り途に木畑亭にいくというノリコさん、ミツコさん、ユキコさん、そしてミエコさんのあとを追いかけて、旦那のご飯に付き合ってから、1時間遅れで駆け付けた。
すでにワインのボトルを空にしている彼女たちに混じって、私はシェフご自慢のオードブルと、大好きなポルチーニのリゾットで、満足、まんぞく。
帰りがけには大粒の横殴りの雨となる。
私は溜まっていたストレスを、美味しいお料理と1日中のおしゃべり、そして、帰りの雨にすっかり洗い流して、帰ったのが10時。随分久々の宵遊びだったなあ。
3日(金) 昨日の悪天候が嘘のような気持のよい晴天がどこまでも広がっている。
旦那の言いつけで、庭の伸びた木の枝下ろしに、浮き浮きとした気分で取りかかる。
とても気になっていたリビングの正面の金木犀とねずみもち、それに山茶花をバサバサと切る。
この山茶花は、ずっと前スズメバチが巣をつくって大騒ぎになったことがあるので、油断がならない。
何故か前回の植木屋さんの手入れの時に、手を付けずに帰ってしまい、それ以来まっくろの葉っぱの塊が気になって仕方がなかった。
夕方まで掛かってさっぱりとしたけど、最後の段階で、梯子を1段踏み外した。
しばらく起き上がれなかったものの、どうやら大したことはなさそう。
でも念のため家に入って膏薬をべたべたと貼る。
思い出したことがある、私のひいおじいさんは、柿の木から落ちて亡くなったのだそうだ。
どうやら、そのDNAを私は強く引き継いでいるらしく、木にのぼるのが大好きなのだ。
「う〜痛い」、と家に入ったところに、運悪く娘がやって来た。
ものすごくおっかない顔で、「もう絶対に木に登らないで」、とがんがん怒る。
そりゃそうだわ、私が歩けなくなったら、彼女に諸々がのしかかってくるのだから。
「はいはい」、と言って、彼女が消えてから、もう一度木に登ってやり残したところを伐る。
切った枝を集めて回っていて、出窓の下で立ちあがったら、今度は脳天をぶつけた。
もう一つ忘れていたことがある。昨夜台所で焼けたフライパンの柄を持ってしまい、掌に火傷もしたっけ。
これってどうやら罰があたったみたい。でもこんなに優等生の女房をやってるのになあ。
神様、誰か他の人と間違えてません?
気持のいい晴天に誘われて2階で高枝ばさみを使っていた旦那は、夕方“ばてばて”でのびた。

5日(日) 朝のうち曇っていたけれど、どうやらお花見日和。
昨日ふと思いついて、タケトシ君にお父さんをお花見ドライブに連れてって、と頼んでおいた。
9時頃ノリコから電話で、10時頃に出発でどう?と言ってきたので、大急ぎで出かける支度を整える。
出かける支度といっても、普段着のままスカーフをぐるぐる巻いて、口紅をつけて、お財布の中身を少し足しただけ。
多摩川の周辺をちょっと走ってもらうつもりだったけれど、結局川を渡って、よみうりランドの山を越える。
ここはかつて少しの間住んでいたことがあって、たまたま偶然にタケトシ君が幼稚園時代を過ごしたところでもあり、お互いに懐かしい土地で、思いがけず嬉しいドライブになった。
多摩川土手は桜が満開で、草野球やらジョギングやらの人で賑わっていた。
旦那はすこし疲れ気味だったけれど、帰りに寄ったファミレスの昼食も全部食べられて、ほんとうにいい日曜日だったなあ。
帰ってから、また少し木の枝を切った。夜は、昨日の深夜喜界島から帰ってきた息子のお土産の、明太子で軽く食べる。
おととい踏み外して捻った足も今日はだいぶ良くなって、だんだんに明るい兆しが見えて、嬉しい新年度の幕開けの予感がする。
6日(月) デイホームに行く途中で何本も海棠の花を見た。
この花がとてもとても好きなのに、なぜが何回トライしても根つかない。
よほど我が家の土と相性が悪いのかしら。でもご近所にたくさんあるのになあ。
だから道すがら何度も立ち止まって人様の庭を鑑賞させていただく。そのついでに、歩くと痛くなる足をしばし休める。
1時間たっぷりたくさんの歌を皆様と歌って、帰り仕度をしていたら、まだまだ歌いたいを言う方が何人もいらっしゃってこれは私としてはとても有難いおはなし。
でもデイホームの時間ってそう余裕がないらしいので、また来週ね、といってあちらのあとのスケジュールに割り込まないように帰る、
帰りにまた海棠のひとり観賞会。
7日(火) 今日は千客万来の一日。こういう日は元気が出て嬉しいのだ。
まず午前中にユトリーバの忘れものを取りにアツコさんが見えて、久しぶりに旦那ともしばしのおしゃべりをつきあってくださり、お互いに激やせの自慢大会みたいな話の花が咲いた。
お昼過ぎにキョウコさんがご主人とお花見がてら、と言ってお願いした薬を届けに来て下さる。
火曜日は午前中のみの診療になさったとか。
今日はうらうらと春らしい暖気が立ち込めて、その柔らかさに誘われた旦那は、だいぶ長いこと庭に出て草むしりをしていた。
そのさなかに現れたキョウコさんご夫妻は、彼が元気なのにびっくりされて、喜んで下さり、私たちも嬉しかった。
キョウコさんのご主人と旦那は、学校の同窓で、国内外を合わせて、一緒に旅をしたことが何回もあり、気心が知れていてとても気楽なお友達。
今日は嬉しいお客様の到来で、旦那がとても生き生きとしているように感じられた。
夕方になって、ヨコハマへ出かける途中のミノが、頼んだ美味しいおせんべいを届けに来てくれたけれど、旦那はそこで力が尽きて、2階に消えた。
お使いに行きそこなったので、今日の夕食は、冷蔵庫の豚肉を焼いてくるみ味噌をからめ、レタスで巻いていっぱい食べた。
旦那は夜になって少々微熱が出たけれど、ご飯もおいしそうに食べているので、気にしないことにする。
9日(木) 春が本格的に居座ってきた。
どこに行っても桜の花びらのシャワーが気持ちよく、降りかかってくる。
やっぱり春はいいなあ。こんないい季節に、足が痛いなんてぼやいても居られないから、これは意識の外に置くことにする。
今日は世田谷区の「皆で歌う会」の日。すこしおしゃれをしていこうと思ったけれど、いざとなったら何を着て行こうかと迷ってしまう。
普段着では参加者に失礼だしなあ、と考えて、気に入って20年も大事にしている、黒とグレーにすこしゴールドっぽいベージュを散らした、桜の柄の縮緬のツーピースを久々に引っ張り出した。
今日のお客さまは約30名。大体50代から60代の元気一ぱいの方々で、最初から盛り上がる。
家事全般は目いっぱいサボったけれど、充実感あふれる一日だった。
爽やかな晴天だったので、夜はお刺身を買ってきて、鉄火どんぶりにした。
旦那は平熱に戻った。どうやら再開した抗がん剤が影響したものらしい。夜お風呂上りに体重を測ったら、2キロ半増えていた。やったね、と二人で喜ぶ。
私自身は恐ろしくて体重が測れないんだ。増えてるに決まってるので。
10日(金) 昨日約束していた通り、朝10時にデイホームに楽譜の整理に行く。
私が行き初めて6、7年になるけれど、段々に楽譜がばらばらになってきて、余計なことかと思いながら進言したのだ。
それにしても、使ったあと元に戻してないのが、ごちゃごちゃの原因で、年中楽譜探しをしていて、我慢の限界にきたということ。
みんな忙しいから無理もないのだろうけれど、〔基本が崩れている〕と、自分のことを棚に上げて考える。
整理のついでに、新曲を8曲ほど増やした。帰り際に見上げた小学校の桜は、すっかり葉がでてしまっていて、つい先週の美しい落花の舞も、今はもはやあわれを感ずるのみ。
11日(土) 今日は2週間ぶりの病院外来の日。暖かくなったので、そろそろ自力で歩いて行くようにしようと、旦那を励まして車の通らない裏通りをゆっくりと歩く。
今日もどうやら異常なしの「はんこ」を頂いて、帰りに病院の前の花屋さんで、この間から気になっていた「においばんまつり」の鉢を買った。
この花は娘時代実家のベランダにあって、それは親戚のホノルルで開業医をやっていた方から贈られたものと記憶している。
だから、日差しに強いものとばかり思っていたのに、花屋さんの話だと、日に当ててはいけないという。
買って帰ったものの、どこに根をおろしていいものやら考えあぐねて、しばらくは鉢で楽しむことにした。
今日はお天気もよく初夏の気温となって、庭仕事でびっしりと汗をかいた。


13日(月) 庭は一年で一番華やかな季節を迎えている。今咲いているのは、黒もじ、れんぎょう、ジャスミン、菫、つつじ、花にら、パンジー、蘇芳、はなみずき、つつじ……と枚挙にいとまもないほど。
こんな狭い庭でも、みんな仲良く席を分け合っている。
今日は月曜日なのでお昼を食べてデイホームに出向く。
いつも会っているSさんが「まあお久しぶり」というので、思わず「あら先週もお会いしたわよ」と言ってから、悪かったかな、と思った。
帰りがけにまた「ありがとうございました、お気を付けてお帰りください」
「まあ、ご丁寧にどうも」と階段を降りかけたら、又々Sさんの声で、「階段おっこちるなよ〜」これだからデイホームは楽しいのだ。
14日(火) 天気予報どおり久しぶりに午後から雨。ついこの間黄緑の葉が出たと思ったら、1週間の間に金木犀の新芽は緑が濃くなった。
このままでは少なくとも50センチほど丈が伸びてしまう。
あわてて、雨がひどくならないうちに、脚立のてっぺんから身を乗り出して太い枝3本に鋸を引いた。
この間買ったばかりの高枝ばさみを担いで新芽をとれるだけ切る。
生まれたばかりの芽を切ることに、とっても気がとがめたけれど、このままでは風通しが悪い。
もう背の伸びる木は植えないことにしよう。
午後になって、ともさんから大好物のクッキーと茅ヶ崎屋のたこせんべいが、みっちりと愛情のこもったお手紙と一緒に宅急便で届いた。
しばらくご無沙汰で、とても気になっていたところだったので、電話をして久しぶりに長々とお喋りをした。
夜になって大雨。今日切った木の枝や葉っぱを、ごみの袋に入れて口をあけっぱなしにしていたことに、夜中になってから気がついた。明日になったらどうなっている事やら。
15日(水) 今日は一日フリーの日。やることはいっぱいあるけれど、どれも面倒でやりたくない。
風があるけれど昨日の大雨がうそのように、春らしい爽やかな空気が充満して気持ちがいい。
いつもなにかやっていないと落ち着かない貧乏性の私だけど、最近はボーっとして風になびいているのもいいな、と思うようになった。これって老化現象かしら。
せめて食事の支度だけはきちんとやろうと決心して、朝から揚げ出し豆腐の準備をする。
取り敢えず冷蔵庫にあるのは、真四角の絹ごしなので、2時間かけて水きりをして揚げて鰹だしだけで味付け。
庭の山椒の新芽を添える。段々やる気が出てきて、冷凍の里芋をこれも鰹だしだけで煮て、山椒の葉をすりおろしてユズみそと和えて乗せたら、結構な一品となった。
今日のメインは鰆のチーズ焼き。なんでも半分しか食べない習慣になっている旦那に、これは最初から半分に切ってあるからね、と言ったら、全部食べてくれた。
昨日から胆汁の出が良くない傾向があるので、注意しなければ。
夜になってご近所に救急車がくる。ここのご主人は救急車のご常連で、もう5、6回は来ている。
今回もきっと明日になったらけろっとして、庭仕事に励んでいるんじゃないかしら?
16日(木)今日はゴミ回収の日なので、早起きして切った枝を鋸で短くする。これってけっこう大変。
夜中に夢の中で必死に走ったので、足が痛い。足が痛くてそういう夢を見たのかもしれないけれど、とにかく私ったら、崖を飛び降りたり電車に飛び乗ったりもう大変!
起きてみれば、それでもやらなければならないことがある。
思い立って、隣の駅まで歩いてお寺に4月分の地代を納め、その足で玉川税務署まで修正申告の用紙を貰いに行く。
2月の確定申告のあとで、旦那の高額医療費の還付金が入り、修正の必要がある。善良な小市民の旦那は、わずかのお金でもきちんと納税しないと気になるのだ。久し振りで二子玉川の町を歩いたら、〔はなみずき〕がとてもきれいだった。
昨日千代田区でクレーンの事故があったばかりなので、開発中の二子の街を、出来るだけクレーンから離れて、
ゆっくり歩き、高島屋で食料品を3日分買い、外の空気を吸い気分よく帰宅した。
今日は午前中に沿線で2件の人身事故があって、往き帰りともダイヤが乱れた。このごろ東急沿線で人身事故が多いのはどうしたことなのかしら。
18日(土) また少し気温が下がって、夕べは一度片づけた毛布を引っ張り出した。
今日は新芽が出たツバキの枝下ろしに励む。ちょっと油断している間に30センチほどの若芽が出て、またあの嫌な茶毒蛾の季節がやってくると思うと気が焦った。
脚立をかけてお隣との境の塀に失礼して上り、1時間かかってすきすきにしたけれど、1枚の葉の裏にびっしりと毛虫がついているのを発見。気を付けていたのに、あっという間に赤いぶちぶち。
慌てて身ぐるみ剥いで洗濯機にほうりこみ、シャワーを浴びて、シャンプーをしたけれど、痒くなった。
でも何にでも効く〔まむし膏〕をべたべたと塗りたくったら、赤い斑点は残ったけれど、かゆみが治まった。
椿の木は我ながら立派な出来で、ほれぼれと何度も見に行く。考えたら今までこれは旦那の楽しみ且つノルマだったのだ。
彼が引退して私は大っぴらにばさばさと枝を切る楽しみを得たというわけ。
旦那はこの2、3日ちょっと怪しの雰囲気だ。今日はちょっと迷いながら、もう少し様子をみて病院に行くことにしようと言ったけれど、いささか心配。微熱が乱高下している。


19日(日) 寝ても寝ても眠いのはどういうわけ?寝すぎて今日は体の節々が痛い。
とてもいいお天気で、家にいるのはもったいないと思いながらも、最狭のテリトリーに沈み込んでいる。
夕方近くなって、流石に必要なものが出てきたので坂を下りていったら、街はたくさんの人で賑わっていた。
今日は旦那が食欲がなく、そうなると私も食事を作る意欲がなくなってしまう。
パンやさんで美味しいと定評のあるサンドイッチを買って、ちょっと花屋を覘いただけで、早々に家に帰る。
雑踏の中を人をかきわけて歩きながら、なんだか世をすねているみたいだな、と思っておかしかった。
昨日今日とテレビでフィギュアースケートをやっているので、大河ドラマを見たり、スケートに切り替えたりと忙しい。NHKにもコマーシャルタイムがあるといいのにな、と思う。週末のテレビって、面白いものが山積みだったり、まったく面白くなかったり、と極端。
テレビを見ながらカズコさんに上げる布袋を1枚仕上げた。それにしても今使っているミシンは、とても使いにくくて腹立たしい。今日は針が2本折れた。1本はミシンの中に落ちたまま拾えない状態。
20日(月) 最近の月曜日はとても忙しい。朝整形外科の先生の所に行って、膝の注射をして、調剤薬局に薬を取りに行き帰ってすぐお昼ごはんを食べて、デイホームに行くというパターンが続いている。
以前だったらこんなことはどうってこともなかったけれど、最近歩くのに時間がかかって、結構大変。ともすると時間がなくなって、デイホームで使う楽譜を探し出すことができず、「え〜、今日は何やりましょうかね」と言いながら、ばらばらでひとつかみぶら下げて行った中から決めなければならなかったりする。
今日はおまけに郵便局に行く用事があり、月曜日の午前中ということもあって、たっぷりと時間がかかってしまった。
それにつけても改めて思うことは、足の大切さということ。
若い頃は1日に20キロぐらい歩いたこともしばしばあって、歩くことが楽しくて仕方がなかったのだけれど、ひょっとしたらあの時の付けが今になって影響しているのかもしれない。早く治ってくれないかなあ。
21日(火) デイホームで楽譜を新しくする提案をした立場の人間としては、この際知らぬ顔はできない。
だいたい只でさえ多忙な人たちに仕事を増やさせてしまっているので、率先して手伝いに行くことにした。
朝10時に出かけていく。ここのデイホームに行き始めてかれこれ7、8年になるけれど、その間同じ歌集を使っているので、私自身が飽きてしまったのが事の発端だ。お昼に一度帰って、食事をしてから、持って帰った楽譜300枚ほどのパンチラベルを張り付けて、もう一度出かけていく。
流石に腰が痛くなったけれど、ヒラノさんと二人の作業で、どうにか50冊の歌集を作り上げて、夕方帰宅。
今日はくたびれたし、少し元気を取り戻したけれどまだ食欲のない旦那のために、超簡単な献立を並べて、一日のおわり。
この2、3日庭の山椒を摺ってお味噌と和えたものが、大活躍をしている。
夕方から降り出した雨は夜本降りとなった。
22日(水) 前から決めてあったとおり、今日は2か月遅れのユトリーバ80回記念の食事会の日。
こういうことになると、集まりのいいこと。熱海のユリコさん以外の10人が揃って、久しぶりの昼食会となる。
殆んどの人が肉料理を選んだのは、胃袋も精神も健康な証拠。食べる、たべる…そして喋る、しゃべる…
ついでに歌まで歌って、皆晴々とした顔で解散となった。
帰りにノリコさんとユキコさんが荷物を持って家まで来て下さった。
鍵が閉まっていたので、旦那が用心深くしめたものと思っていたら、しばらくして登山用の杖をついて外から帰ってきた。
坂下の「とうきゅう」まで行って、花の苗を買ってきたという。
つい昨日までの元気のなさは何だったのだろう、という感じ。お昼の魚の煮付けも綺麗に食べてあった。
このパワーがあれば大丈夫という気がする。どうかこの状態が続きますように。
23日(木) 昨日のことだけれど、ちょっとした小さな事件が起きている。
隣の娘から電話で、息子の家の敷地に置いたプランターの中にバイクが突っ込んで、敷いてある砂利が道路に散乱してプランターが割れたという。
見に行ったら5つ置いてある花のプランターの列が乱れて、そのうちのひとつは、割れて花がえぐられていた。
その人は黙ってバイクを走らせて行ってしまったらしい。
一瞬ピンときたけれども、見ていなかったので証拠がない。
今日、その時の目撃者で、倒れたバイクを立て直して道路に戻してくださったというお向かいのご主人に会ったので、聞いてみたら、やはり私が思っていた人と同じだった。
もう80歳をとっくに越しているそのご老人は我が家のすぐ近くのお宅のご主人だけれど、前にもうちの垣根を車で擦って行ったまま知らん顔だったことがあるのだ。
お向かいのご主人の話によれば、うちの前の一方通行の通りを逆行する常習犯らしい。
先方は何も言ってこないので、我が家としては、家に傷がついたわけでもないし、せめて、しばらくは割れたプランターをそのままにして、道路に散らばった砂利を拾い集めて元にもどす手段にとどめているけれど、いつか何事か起きなければいいけれど、と少しばかり心配だ。
それにしてもひとこと言ってくれればいいのに、ご近所同士のトラブルってこういうところから起きるんだろうな。
それより老夫婦お2人の生活で、奥様がもう外に出られず、ご主人も歩くのが大変で、買い物にバイクを使っているという話を聞いて、その方が、怪我がなかったかの方が心配。
24日(金)昨日のメールで予告があって、マチコさんから掘りたてのタケノコが朝送られてきた。只さえ有難いのに、とても上手に茹でてあって、このうえなく嬉しいプレゼントだった。
早速若布と鰹だしの薄味で煮てお昼に堪能した。まだたくさんあるので、隣の娘におすそ分け。
ヨーコさんにも電話をして、虎ノ門に行った帰りのミノに自由が丘の駅でお裾わけを渡す。
私はそのまま二子玉川まで行って、高島屋で食料を仕入れた。あしたから当分出ないで済ませようという魂胆なのだけれど、どうなることやら。ゴールデンウイークに家にこもっているなんて、精神が屈折してるなあ。
壊れたプランターの所に、旦那が棒を立てた。こちらの意思表示のつもりだけれど、ご本人からはノーリアクションで、一人相撲みたい。
夜になって、ヨーコさんから筍が美味しくて感激よ〜と電話。どうやら食べながら電話してきたみたい。
あげた側としては(ほんとはマチコさんだけど)こんな張り合いがあることってそうはない。
25日(土) 寒い!桜も散り果てて、植物の世界は早や緑に包まれているというのに、この寒さは何なんだろう。
そのうえに終日冷たい雨が降り続く。こういう日は病院も空いているに違いないので、いつもより30分遅く出たら、案の定1時間以内に家に帰れた。先々週の検査の数値は悪くないのだけれど、この2週間旦那の体調は決して良好とはいえなかった。
そのことを話したけれど、これから2週間はゴールデンウイークなので、とにかく家で良い環境を整えて、無事に過ごすしかない。今日はなんだかやたらと眠い日で、私は1日中朦朧状態。
1日中雨だったおかげで、花の水やりをしないで済んで助かった。ご飯をつくって後片付けをするだけで私の体力は、MAX状態だったのだ。1日の最後にお風呂にとっぷりと沈んだら、はじめて目がぱっちりした。

26日(日) 朝5時に起きたら旦那がもう居ない。トイレかな?と思いながらそのまま寝ていて、8時に降りて行ったら、下の椅子で寝ていた。
夜中からお腹が痛くて眠れなかったという。強くてあまり使いたくないが痛み止めの座薬を使ったら?と勧める。
最近はこういうことの繰り返し。旦那のお友達がちらちらとお見舞いの電話をくださり私の判断で、電話口に出てもらったり、私の応対で済ませたりしている。
Hさんの電話では長話をしていて、最後にどうもありがとう、うれしかったよ、というので私もほっとした。
今日は昨日と同様に寒くてしかも強い風が朝から吹いたが、洗濯物を干す頃には寒気がゆるんで、春らしい風に変わった。
27日(月) 春風とともに膝の痛みがだいぶおさまってきた。朝のうちに整形外科に注射に行く。
行きがけに近くのマンションのごみが、散乱していて1羽のカラスがネットをつついているのを見た。
もう1羽が、電柱の上で「か〜〜」と鳴き、遠くで同じ声で返事をしているのが聞こえている。
10分ほどして、同じ場所に戻ってきたら、なんと、20羽もの仲間が、共同作業で網を破って、生ゴミのお食事中だった。
なんだかその連携プレーに感激する。だいぶ減ったとはいえ、この季節はまだまだカラスが多い。
今朝はやっと春が戻ってきたという感じで、こちらにもやる気がふつふつと湧いてきている。
今日こそは表の通りに面した草を抜こうと思っていたけれど、これが「母子草」と昨日カズコさんに教えられて、躊躇した。これって食べられるのかしら?
29日(水) 久しぶりに渋谷に行こうと思った。ビーフシチューを作るための肉の買い出しだ。
定時に来た電車に乗ったけれど、一向に動かない。そのうち、中目黒で人身事故のため当分動きません、とアナウンスがあって、ほとんどの人が降りて行った。
又か、と思う。このところ東横線の人身事故が頻発しているのだ。
仕方がなくバスに乗ったら、超満員で渋谷まで立ちっぱなしで50分もかかってしまった。
なんだか無性に腹立たしい。
亡くなった方は、余程の理由があって自分からこの世に別れを告げたのだろうけれど、どれだけの人が迷惑をこうむったことか。
帰ってから“AURA”のカクマツさんから電話。彼女もお店を開ける時間に間に合わないので、渋谷から田園都市線で二子玉川経由で来たという。
「私がもしその立場になったら、青木が原で一人で死ぬわ」、と言ったら、彼女はしたたかにも、「皆そういうけれど、青木が原は夜暗くて怖いから、大きな迷惑で死ぬよりも、小さな迷惑をかけ続けてず〜っと生きてく」と言い、私もなるほど、と思い、そこで意見が一致した。
夕方ミノ、ヨーコ夫妻が現れて、夜ごはんを一緒に食べることになったので、“アンカフェ”に行き、しばらくおしゃべりを楽しみ、彼女の「つまらない男と結婚するなら、一人でケーキ屋さんをやっていくほうを選ぶ」という言葉に、大いに同調してケーキを買って帰った。
今夜は子どもたちを呼んで久しぶりに賑やかに、ビーフシチューの晩餐会となった。旦那もなんだか嬉しそうだったけれど、気がついたら寝に行っていた。楽しい日だったなあ。
30日(木) 4月が終わってしまった。我が家にとっては、旦那が2か月どうにか無事に過ごしてくれたので、喜ぶべき月だったといえる。
昨日ミノと約束してあった、武蔵小山のおいしいおせんべやさんに連れて行ってもらう。
とにかく美味しい手焼きなのだけれど、焼いているのはどうみても80歳以上のおじいさん。
お店も古い昔スタイルだけれど、味が絶品で、愛想のいいのが気に入った。
奥さんが入院していて、いつまでやれるかわからないというので、慌てて買いにいったというわけだけれど、散歩の達人のミノはあちこち探索済みで、ひと駅歩いて帰る途中の酒屋さんの変わったかりんと(梅味、わさび味)などを買って、山のようなおせんべをぶらさげて、馬鹿みたい、と我ながら思う。
でもあげたい人の顔が何人も浮かんで、これは近々もう一度行くことになりそう。

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